彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
(大河が、東山高校のボスの座をかけて、頭である尾村のガキともめてる話は知ってたが・・・)
ぶつかるのは、時間の問題だと伊織も言っていたけど・・・
(よりによって、凛を連れて来た日にケンカをしなくてもいいだろう・・・!?)
そこまで考えて、ハッとする。
「凛は!?」
真っ先に思ったのは、母校である東山高校に連れて来た弟分のこと。
この場にいない、可愛い後輩のことを思い出してあせる。
(やべーぞ!凛は、麗子さんに頼まれて、大河の弁当届けに行ってんじゃんか!?)
大河が尾村ともめてるなら、大河探しに旅立った凛が、その現場に居合わせてもおかしくない・・・!
(どうすりゃ、いいんだ!?)
思わず、雑賀先生を見れば、しぶーい表情をしていた。
わかりやすく言えば、困った顔。
そこへ再び、赤木の声が上がる。
「は?あの、『りん』・・・って、なんです??」
「え!?」
俺への質問。
ジッと俺の顔をガン見して、答えを求める顔で聞いてきた。
「あ、いや、その・・・」
俺の発言に、首をかしげながら聞いてくる赤木に俺も返事に困る。
(冗談じゃないぞ!初対面の奴に、凛のことをしゃべれるか!ただでさえ、大河と凛は知り合いだから、ここで俺が余計なこと言えば、凛が面倒に巻き込まれる!)
うっかり凛の名前を出したことに、聞かれるような発言をした自分に公開する。
そして、なんとか自分が言った言葉を誤魔化そうとしたが――――
「コラコラ、ナンパしてる場合か、高校教師~!?」
その役目を、強面の雑賀先生がしてくれた。
「ナンパぁ~!?」
「ご、誤解です、雑賀先生!」
ただし、俺が不快になるフォローの仕方だった。
「雑賀先生・・・冗談でも、その言い方やめてくれません?」
「そ、そうですよ!自分は、不純な動機で聞いたんじゃ~!」
「ごちゃごちゃうるせぇ!!」
俺の苦情ごと、赤木の言葉ごと一喝(いっかつ)すると『組長』は言った。