彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)



(大の男が、ガキ1人捕まえられなくてどうすんだよ?俺なら、そんなヘマしないけどよぉ~)



「アンタから逃げるって・・・・相当曲者ですなぁー」

「ホントですよ!!あんな、ふてぶてしくて口が達者で、腕もたつヤンキーは初めてです!親兄弟の顔が見たいですわっ!」

「わかった、わかった。そりゃあ、ひでぇーガキだったみたいですが・・・・第一中学の生徒で間違いないのか?」

「はい!バレバレの嘘ついてましたので、間違いないですよ!」


「へぇ~・・・・聞いたか、オイ?そうらしいな?」




赤木から確認を取った後で、俺へと話を振る雑賀先生。



「え、ええ・・・物騒みたいですね・・・・」



それを受け、作り笑顔をしながらホッとする。




(なんだ・・・第一中学の生徒かよ・・・驚かせやがって。)




一瞬、凛が暴れてるのかと思ったが、話を聞く限り凛じゃない。



(あいつは、必要最低限の戦いしかしない。)




雑賀先生にスクランブルをかけるような騒ぎを、起こすはずがない。

ましてや、凶暴でも、凶悪でもない。

それと一番ほど遠い、のほほんとした子供。




(なによりも、凛は大河の弁当を届けに来てるだけだ。ありえねーよ。)



〔★知らないことは幸せだった★〕




「オメーの言う通りだな、『サナ』?物騒っで困るぜ。」

「雑賀先生。」




『サナ』というのは、時々先生が呼ぶ俺のあだ名。

瑞希とも、真田とも、呼んでまずい時の呼ばれ方だ。




(つーことは、俺がいることが、他の先公に知られるのもヤバいってことか・・・?)



チラッと、赤木という教師を見れば、目が合う。

そして、不自然な笑顔をされた。

相当動いたのか、未だに顔は赤いままだ。

興味なかったので、視線を雑賀先生に戻す。

彼は湯呑に残っていたお茶を飲み干すと、一息吐いてから言った。




「やれやれ・・・俺は昼休みもゆっくりできないのか・・・」



独り言のようにつぶやくと、立ち上がって肩を回す雑賀先生。

そして、俺へと視線を向けながら告げた。
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