彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
「すみませーん・・・やむにやまれぬ事情がありまして・・・!」
「事情?」
その言葉に嫌な予感しかしない。
聞き返せば、元気のない子犬のような顔をする凛。
そして両手を前に出しながら、俺の方にフラフラと近づきながら言った。
「ふえーん・・・!ひどい目にあいましたぁ~!」
「え!?やっぱり!?」
そう聞いただけで、返す言葉は決まっていた。
予想はついた。
「や、やっぱりって・・・瑞希お兄ちゃん・・・?」
「やっぱりだから、やっぱりなんだよ!」
聞き返してくる凛を抱きしめ、あやすように言った。
「凛、お前・・・円城寺と尾村の番長対決に巻き込まれたんだろう!?」
「えっ!?ご存じなんですか!?」
「たった今、その件で雑賀先生が出動した。」
「ええ!?見当たらなかった理由はそれ!?」
「そーだよ・・・」
びっくりする凛に、あーあ・・・という気持ちで答える。
同時に、凛の身に何が起こったのかも察した。
「可哀想に、凛・・・・大変だったな。」
「わ!?み、瑞希お兄ちゃん!?」
ちっちゃくて、頼りない凛を抱きよせる。
それでまた声を上げたが、気にしない。
「何も言わなくてもわかるぞ、凛・・・。お前、円城寺達の喧嘩に巻き込まれたんだろう?」
「う!?そ、それは・・・・!」
「天然な凛のことだ・・・どうせ、止めようとして、どうにもならなくなって、高千穂辺りの手引きで逃げてきたんだろう?」
「えぇえ!?あ・・・えーと・・・・」
「気にするな。女だけど、高千穂の方がヤンキーの先輩だ。それに今の時代は、男も女もないだろう?」
「・・・男女平等ではあると思いますが・・・・瑞希お兄ちゃん、聞いてください!本当は、俺・・・!!」
「聞かなくても、わかってるよ。」
「え!?わかってるって??」
「凛は、ケンカを止めようとして頑張ったけど、騒ぎは大きくなった・・・だろう?」
「えっ!?」
そう言えば、凛の表情が引きつる。
ああ、やっぱり、そうだったんかー・・・