彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
どれぐらい、目を閉じて、合掌を続けたかわからない。
ただ、どこでこれをやめればいいのかタイミングがつかめなかった。
目を閉じていても、刺さる視線が痛かった。
それにどう対応しようかと思っていれば―――――――
「ばか野郎・・・・・!」
ギュッ。
「え!?」
あたたかい両腕が、私の体を背後から抱きしめてきた。
誰なのか、見なくてもわかる。
顔にあたるサラサラの髪と、良い匂いと、
「凛・・・・・」
心地よい声でわかる。
相手が誰かわかってる。
「お前・・・・ホント、ブラコンだわ・・・!」
「瑞希お兄ちゃん。」
目を開けて、首だけ動かして彼を見る。
「俺こと、好きすぎるだろう?」
そうつぶやく彼の顔はもう青くない。
苦しそうにしてない。
その姿にホッとする。
「・・・・当然ですよ。僕にとって瑞希お兄ちゃんは、世界で一番ですから。」
「あーもー!マジで、恥ず!このアホの子!アホの子!」
「わわ!?痛いですよぉ~?」
ギューと、背後から抱きしめながら、額を私の後頭部にぶつけてくる瑞希お兄ちゃん。
コツン、コツンと、軽く当たるだけで痛みなんてない。
楽しくなって、思わずニコニコすれば、真っ赤な顔の彼と目が合う。
「・・・・ばか。」
「・・・・はい、ばかです。」
言われたことに同意すれば、彼はうつむき加減で私を抱き寄せた。
これは、痛くて苦しかったけど・・・・
「凛・・・・」
「はい。」
「先に死んだら、絶対許さないからな・・・・!?」
赤い頬。
泣いているのか照れているのかわからない好きな人。
(きっと、泣けないんだ。)
この人は、見た目より強い人。
思った以上に、繊細(せんさい)な人。
後輩達の手前、初代総長として泣けない人。
(泣いちゃいけないと思ってるんだ・・・。)
そう思ったら、切なくなった。