彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
今の瑞希お兄ちゃんが、愛しくて、苦しくて、恋しい。
こんなに近くにいるのに、遠くにいるように感じて悲しい。
(わけてほしい。)
あなたの胸の痛み。
心の傷。
消せない過去。
(私を救ってくれたあなたを、今度は私が救いたい。)
「絶対死なないよ・・・・!」
愛しいあなたに、すり寄りながら誓った。
「瑞希お兄ちゃんとの約束、絶対に破りません。」
漢らしく言ったのに、なぜか視界がゆがむ。
「俺、死なないから・・・ずっと、瑞希お兄ちゃんの側にいるから・・・!だから・・・・!」
「凛?」
誤魔化そうと思って張った声が、甲高くなる。
閉じようとしている口が、上手くふさがらない。
ゆがんで、声がこぼれ始める。
「うっ、うっ、うっ・・・うえええ~・・・・・!!」
瑞希お兄ちゃんだって我慢してるに、耐えているのに。
「・・・・ばか。泣くな。」
泣いてしまった。
「だってぇ、だってぇ・・・・!」
「俺の代わりに泣いてどうする?それとも・・・代わりに、泣いてくれてんのか?」
「うぐっ、ひっ、ひっ、ひっく!!」
そうかもしれない。
優しく肩を抱き、頭をなでてくれる瑞希お兄ちゃんにしがみつきながら思う。
男は簡単に泣けない。
一番偉い総長だったら、余計泣けない。
瑞希お兄ちゃんは泣くことを許されない。
だったら、男ではなく、漢でいようとする私が泣けばいいんじゃない?
「お兄ちゃん・・・お兄ちゃん・・・瑞希お兄ちゃん・・・・!」
「・・・・・ホントに凛は・・・・」
その後に続く言葉を、彼は言わなかった。
そんな私達に他の先輩方は何も言わず、静かに見守っていた。
強い風が吹く。
静かな墓地に、花びらが飛び交う。
風が吹くたびに、私が落した花束から白く細い花びら舞う。
自分以外の誰かのために、初めて泣いた。
~予測不能(よそくふのう)!?恋も非行もイバラ道!?~完~