彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
初めて家出した日。
むちゃくちゃに電車を乗り継いで、知らない場所へ行った。
1人で泣いていた私を助けてくれたのは、【瑞希】という名前の暴走族のお兄ちゃん。
「瑞希お兄ちゃんは、どうして暴走族してるの?」
「んー・・・たくさんありすぎて説明できないな。」
誰もいない道路を、2人乗りのバイクで走り抜けた。
真夜中の暗い闇の中、バイクが照らすライトの明かりだけが道しるべ。
彼は私に、いろんな場所を見せてくれた。
今まで見たことのない光景。
夜という世界に、ひどく興奮した。
「凛、もう気がすんだろう?帰ろう。送ってやる。」
「やだ!!」
だから、現実へと引き戻すお兄ちゃんに反発した。
「せっかく、夢の世界に来たのに!帰りたくない!」
「おま・・・某所(ぼうしょ)の夢のテーマパークじゃないんだぞ?」
「やだぁ!帰らな~~~い!!」
最後に駄々をこねたのがいつか思い出せないほど、久しぶりにわがままを言った。
こんな子供に瑞希お兄ちゃんは、本当に辛抱強く付き合ってくれたと思う。
「そうだ、凛!おんぶしてやろう。バイクの後ろも飽きただろう?」
「おんぶ?」
今思い返せば、あれは瑞希お兄ちゃんの作戦だったのかもしれない。
「おぶんしてやるよ。」
笑顔で言うと、また泣き出しそうな私を抱き上げてバイクから降ろした。