彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
奴らは『怒る』という態度は見せなかった。
怒りはしなかったが、憤(いきどお)りのこもった声で騒ぎ出す。
「そんな!それはないっすよ、真田さん!!」
「面倒見ないって・・・庄倉さんも、先輩方も大怪我ですよ!?」
「負けたとはいえ、あんまりの扱いじゃあ・・・」
「そこが最初から違うんだよ。」
比較的、力があるらしい庄倉の仲間の訴えに、眉間にしわを寄せながら瑞希お兄ちゃんは言った。
「『このイベントのご褒美』はなんだ?」
「え!?」
「俺らのチーム『龍星軍』の看板を公式で語れるってことだろう?」
「そ、それはもちろん、わかって―――――――――」
「お前らの頭の庄倉は、それがわかってねぇ。」
顔に一層険しさを込めながら、瑞希お兄ちゃんは告げる。
「全部筒抜けなんだよ。・・・ずいぶん、俺らが嫌いな方法で、他のライバル蹴落としてここまで来てくれたな・・・!?」
「うっ!?そ、それは誤解で~!」
諦め悪く、言いわけをしようとする羅漢メンバーだったが怒っていたのは瑞希お兄ちゃんだけじゃなかった。
「何が誤解だ、愚か者。俺達をあざむけるとでも思ったのか?くだらん小細工をしおって。」
「そうそう、女の子を人質にして~優位に立って~」
「円城寺がダチを助けるために、この勝負をあきらめるとまで言ったそうじゃねぇか?」
「そんな下種の極みしかできないクズどもに、誰が俺らのチームを継がせるってんだぁ~!?」
眼鏡の男と美形の人と男前と、ちょい悪の百鬼のお兄さんが順々にくぎを刺す方々。
それをまとめるように瑞希お兄ちゃんは言った。
「『龍星軍』を名乗るのは勝手だが、認めるかどうかは俺らが決めることだ。」
冷たい表情で、悪あがきをする連中に言う。
「最初から、オメーらは候補じゃない。オメーらみたいなバカ相手に、他のチームがどう対処するか見させてもらってただけだ。」
「瑞希お兄ちゃん・・・!?」
「円城寺は、筋を通して頼みに来た。靴を擦り減らしながら俺らのところに頼みに来た。空白になっている『龍星軍』で走らせてくれって。そいつを俺らが許可した瞬間、ハイエナのように群がってきた。それがオメーらだ!!」
腹の底から叫ぶ声が耳にこだます。
思わず、私を抱き上げている彼の腕をぎゅっと握る。
それに気づいた瑞希お兄ちゃんが目だけで私を見る。
今までとは違った意味で、薄らと目を細める。
そして、声のトーンを少し落としながら瑞希お兄ちゃんは言った。
「そうやって、ハゲタカよろしくで見物決め込んでたくせに、くだらねー理由並べて勝手に大会にしちまってよ~自分達にもチャンスはあるはずだ、不公平だなんだって都合のいいこと言いやがるオメーらの態度が気に入らねぇ・・・!!」
「ううう・・・」
「立場考えてもの言えやっ!!」
しかりつけるように叫んで罵る姿。
(か、カッコいい・・・・!!)
怖いけど、見惚れてしまう。
素直に、惚れ直した。