彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
笑顔しか見たことなかったけど、怒ってる姿もいいと思った。
(やっぱり、瑞希お兄ちゃんカッコいい・・・)
ポーとしていれば、大きく舌打ちしてからお兄ちゃんは言った。
「おい、さっさと医者に円城寺を見せろ!吾妻と長谷部、いつもの場所まで連れていけよ。高千穂の奴も回収してやらねぇーといけねぇし。高千穂には、ゲームの結末も伝えやれ。」
「人使いが荒いことだ。行くぞ、3匹。俺について来い。」
瑞希お兄ちゃんの言葉に、眼鏡のお兄さんが車から離れながら答える。
その人が向かった先には、別の車があった。
周りにある派手な車とは違う、普通の大型ワゴン車。
そのドアを開けながら言った。
「お前ら、瑞希の言葉が聞こえなかった?早くこっちへ来い。」
視線の先にいたのは3人の男子。
「円城寺、吾妻、長谷部。」
「あ・・・!?は、はい!」
眼鏡のお兄さんの言葉で、我に返ったように動き出す男子達。
最初に返事した吾妻君という子が、長谷部君という子の肩を叩く。
それで慌てて、長谷部君は円城寺君の肩を抱える。
その反対側から、吾妻君が円城寺君へと肩を貸した。
「お大事に~」
「「あ、あざーす!!」」
綺麗なお兄さんが手を振りながら言えば、深々と頭を下げてお礼を言う吾妻君と長谷部君。
でも、円城寺君だけは・・・
「・・・。」
「・・・?」
(なに?)
私を凝視したまま、視線を逸らさない。
睨んでいるとか、怒っている感じじゃない。
ただ、呆然とした顔で見ているだけだった。
その間に、瑞希お兄ちゃん達の会話は続く。
「高千穂が回収でき次第、呼び出した医者に診せる。」
「そうしてくれ。」
瑞希お兄ちゃんにスマートに答えると、眼鏡のお兄さんは男子達を車に乗せてさっさと走り去った。
駐車場から車が出て行くと、瑞希お兄ちゃんは別の人物へ目をやる。
「オメーは、この場の後始末な。引っ掻き回しやがったんだからよ?」
「うはははは!任せとけ!」
命じた相手は百鬼という男。
嬉しそうに瑞希お兄ちゃんに返事した。
「わはははは!しっかり仕切ってやんよ!バトルロワイヤルになったらごめんなー!」
「すんなよ!」
「ぎゃははは!冗談だって~?」
(本当かな・・・)
イマイチ信用できない相手。
それは瑞希お兄ちゃんも同じらしく、悪びれなく言う百鬼に呆れ返っていた。
「そうならないようにしろ、皇助!よぉ、車だしてくれ。」
そう声をかけたのは運転席にいる綺麗なお兄さん。
「喜んで♪」
運転席の美形のお兄さんが頷けば、別の声が上がる。
「行先はどーすんだ?」
助手席に腰を据えた男前のお兄さんだった。
こちらへと振り返りながら、瑞希お兄ちゃんに聞く。
「決まってんだろう。『家』だ、『家』。」
これに瑞希お兄ちゃんは、表情を崩すことなく言った。
「コイツを『家』に連れて帰る。」
「え!?」
こいつって・・・!?
(私を連れて帰るの!!?)
顔を見上げれば、こちらを見下ろしていた眼とあう。
その瞳は、『何も心配するな』と語っているようだった。
それに私が何か言う前に、大きな声で瑞希お兄ちゃんは叫んだ。
「以上を持って、『龍星軍』の継承式を修了する!!わかったな!!?」
「「「「「お、おっす!!」」」」
有無を言わせない罵声に、いろんなヤンキーが背筋を伸ばして大合唱する。
瑞希お兄ちゃんに従う姿勢を見せた。
その光景に、夢でも見ているような錯覚に陥る。
6年ぶりに見る彼(か)の人は、可愛くも美しい。
可愛い中にも、かっこよさがある。
そんな瑞希お兄ちゃんの腕の中で、私は固まることしかできなかった。
~彼を求めて三千厘の章~完~