彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
振り返らないようにして、奴らから逃げた。
彼らを見なかったけど、どうしているかは聞えて来た声でわかった。
「なんて野郎だ、凛道蓮!」
「あいつ性格悪すぎるぞ!?」
「いいや、悪知恵が働きすぎだろう!?」
「貝原さん、しっかり!」
「くっ!お、おえ!あのガキを、凛道蓮を拉致れ!」
「え!?タイマンはいいんすか!?」
「うるせぇ!拉致らってんだ!捕まえろ!」
「「「お、おす!」」」
けっこう、怒ってる。
やる気を出してる。
私のはるか後ろで、飛翔連合がそんなやり取りをしていた。
一方で赤龍会はと言うと――――――
「おい、俺らも行こうぜ!」
「飛翔連合がラチったところを、横取りしようぜ・・・・」
「へへへ!凛道、覚悟しやがれ~」
こっちもロクでもなかった。
ほどなくして、奴らの悪巧みは聞こえなくなった。
聞こえなくなるぐらい、離れることができたから。
(・・・・・・・・・やっぱり、振り切るのは無理かもしれない。)
何も映っていないミラーを見ながら思う。
(旗さえなければ。)
戦う覚悟はできてるけど、旗さえなければ。
旗がなければ、トンファーで片づけられるのに。
(でも、旗はゾッキーの命だって瑞希お兄ちゃんが・・・・)
手放すわけにはいかない。
朝まで、持って移動しなきゃダメ。
暴走族の、龍星軍のシンボルである大事な特攻機。
(これを戦闘になった時、守れるかどうか・・・・)
「・・・・・・・・・・また、槍みたいにして使おうか。」
幸運にも、たすきの残りがある。
グルグルにまいた後で、たすきでしっかり縛ってしまえばいい。
そうすれば何とかなるけど・・・・
(日本刀とか持ち出されたら、アウトだよね・・・・)
神様どうか。
奴らが備前長船や妖刀村正を持ってませんように。
〔★神様も困るお願い内容だった★〕
(もう少ししたら、道が広くなる。そこで―――――――――)
けりをつけよう。
一瞬だけ震えた体。
深呼吸をして瑞希お兄ちゃんを思い浮かべる。
―凛、大好きだぞ―
「よっしゃー!!元気出たー!!」
愛しい彼を思い浮かべ、自分にカツを入れる。
(待っててね、瑞希お兄ちゃん!戻ったら、一緒に夜明けのコーヒーしようねー!)
勇気が出た。
数が多いけど、怖いけど、立ち向かおう。
(だって私は、瑞希お兄ちゃんご指名の龍星軍4代目総長だもん♪)
〔★凛は自家発電で元気を出した★〕