【完】ヴァンパイア、かなし
「貴方は強くなったのね、エルザ。貴方の覚悟は分かった。……それでも、私達は親なの。エルザ、その長袖を捲ってみて?」


僕に起こっていることを、話す母も黙っている父も悟っているのだろう。


もう逃げられない。僕は、そっとカーディガンとカッターシャツを捲った。


乳白色の肌に気味悪く浮かぶミミズ腫れ。それを目の当たりにして、母は手で口を覆い、父はそんな母の肩を抱く。


「どうして吸血しない?君には吸血したい相手がいる筈だ」


怒っている訳ではないが、最近何度も見た重厚感のある父の瞳と言葉に、僕の本音が暴かれて行く。


「……どうして、でしょう。でも、僕はあの人を吸血しない。あの人に恋をしているとは到底思えない。もし、あの人を吸血しても治らなかったら、いえ、治ったとしても僕は一生立ち直れないでしょう」


出会ってから幾度となく和真先輩を吸血したい衝動に駆られて来た。


でも、僕のこの和真先輩への感情は恋じゃない。特別な感情だけど、特別なのは和真先輩だけじゃない。荘司先輩やありさ先生だって同じ位置にいる。
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