【完】ヴァンパイア、かなし
とうとう母は嗚咽を漏らし、泣き始めてしまった。


「お願いよ、エルザ……!勘違いかもしれなくても吸血するの!そうしなければ、貴方は」


続きは聞かなくとも分かった。このままいけば僕は長くない。それは本能的に気付いてる。


そんなの両親からすれば辛いことだろう。放っておける事態ではない。


「エルザ、良いかい。まだ君には言っていなかったね。もし吸血出来ずに果てた先、君が大切にしていた人も、君を知る家族以外の全ての人も、君が死んだら記憶を無くす。君は、この世界から消されるんだ。それでも吸血しないのか?」


父の、静かな衝撃に言葉を失う。


ああそうか。ヴァンパイアが吸血したのをもみ消す事があるように、突然亡くなったヴァンパイアもこの世界からもみ消されてしまうのか。


どちらにしても、何て残酷な仕組みなのだろう。化け物として生きようが、人間として死のうが、僕達ヴァンパイアには救いなんてこれっぽっちも無い。
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