【完】ヴァンパイア、かなし
それなら、どちらにせよ絶望しかないのならば。


「……最終的に選ぶのは僕だ。大切にしたい人の命と僕の命、どちらが重いかなんて今すぐ分かる事じゃない」


ソファーを立ち、リビングのドアを閉じるまでの間、泣いている所なんて見たことのなかった母の嗚咽がずっと耳についていた。


僕は親不孝なのかもしれない。あの場で嘘でも吸血すると言ってしまえば良かっただけなのに。


でも、脳裏にちらつく和真先輩の顔が、そうさせてはくれないのだ。


死ぬことは怖い。でも、もし僕の手で彼女を失うような事があったら……きっと、その方がずっと怖い。


これが恋心かどうかといえば違う気がするのだけれど、それだけは断言出来る。


僕は変わったのだ。それが良い事なのか悪い事なのかは判断しかねるけれど、もう、僕はそれに焦がされようとも日だまりの温もり無しには生きて行けない。
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