【完】ヴァンパイア、かなし
「エルザのクラスは何すんの?」


でも、訝しむ暇も無く荘司先輩はいつもの荘司先輩に戻っていて、どういう意味か聞く隙も与えてはくれない。


「えっと、うちも喫茶店なんです。明治茶屋」


「へー!お前着物っつーの?袴ってのが正解なの?あれ着るんだ。はは、似合わなそー」


「荘司先輩みたいに醤油顔でもなければ、胴が長くてくびれの無い日本人体系でもないですからね」


しつこく詮索する気も起きないその軟体な荘司先輩に、僕も通常通りに皮肉めいた返事をすれば、荘司先輩はへにゃりと笑った。


「辛辣だなぁエルザは。兄ちゃん悲しいや」


「だから、いつ僕の兄になったのです、貴方は」


この関係を崩したくない。変えたくない。だから、僕は荘司先輩のそういう部分には深く突っ込まない方が良いのだろう。


「休憩時間に和真と行くわ」


「ありがとうございます。でも、僕は景観の悪い物は見たくないので荘司先輩のクラスにはお邪魔しませんね」


僕の返答に「えー、ひでぇ」とふにゃふにゃ答える荘司先輩に、僕の気も良い意味で抜ける。だから、この人との時間は僕にとってかけがえの無い物になりつつあるのだ。
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