【完】ヴァンパイア、かなし
考えているうちに、ぬるりとした感触が顎を伝い、しと、とフロアに落ちる。


血……血、血、血、血、血!


摂取は週一、二度でいいとはいえ、僕の栄養源とも言えるこの赤い液体に、生臭い香りに、僕の中の『化け物』がざわざわする。


「おい君!大丈夫か!?」


赤嶺先輩が声を上げ、僕の髪の毛に触れる。


視界がぐらぐらと揺れて、鼓動が早まる。


食べたい……その白い首筋から、細い手首から、否、乳房と脇の狭間からが美味いかもしれない。


頭の中で美しい極上のフルコースが並ぶ自分に気づき、『人間』である僕は冷静を取り戻す。


いけない……見られている。僕を『化け物』だと立証する、その色素の薄い睫と、色素が薄い故に血の色が滲む、赤い瞳を。
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