【完】ヴァンパイア、かなし
展示してある楽器の、数点のヴァイオリンな中から一つを取り出し、軽く調弦をする。


「僕、あまりクラシックを聴く方ではないのでオリジナルになりますが構いませんか?」


「逆に凄くね?ってかやっぱり、お前がヴァイオリン持つと絵になるなー」


ふにゃふにゃとした笑顔を答えの代わりに、僕はそっとそのヴァイオリンを奏で始めた。


外からは微かに生徒達の賑わう声が聞こえて、それに乗せるように穏やかなヴァイオリンの音を奏でると、世界が鮮やかな色から柔らかな色へと変化するよう。


引きながらたまに荘司先輩のほうを確認すれば、無邪気な子供のような瞳で僕を見つめ、楽しそうにしている。


緩やかなストロークで乗せていた弓を、弾くように弦に乗せて弾き方を変えてみれば、荘司先輩は更にわくわくと肩を震わせた。


自分の心の安らぎに使っていた物が、こうして誰かに喜んで貰えるだなんて。


もっと、もっと。自分より、誰かの為に生きれる僕になりたい。
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