【完】ヴァンパイア、かなし
荘司先輩のこの目は、少しだけ怖い。
「えっと……好きか嫌いかで言うと好き、ですけど」
「そういうんじゃなくてさ、抱き締めたいとか、ちゅーしたいとか、そっちの好き」
この人は真剣に、何て恥ずかしい事を聞いてくるのだろう。自由人の特権なのだろうか、誰かにズバズバとこんな事を普通言えないだろう。
「……そういうのとは違う、と思います、けど、僕、恋とかそういうの分からないし、そもそも他人を愛だ恋だ抜きにしてこんなに大切に想うのも初めてだから、多分、荘司先輩のご期待に添える答えは出来ません」
「そ、かぁ。ごめんな。特に深い意味は無くて!エルザが真面目に答えるからからかいようも無かったじゃーん」
「あはは」と取って付けたように笑う荘司先輩は、いつものふにゃふにゃな荘司先輩だ。
こういう時にどう返して良いのか分からないものだから、困って持て余した右手で眼鏡のフレームを鼻に押し付けて、そのくすぶる何かを消化しようと試みる。
《三年四組満島荘司君、至急、職員室に来て下さい。繰り返します……》
「げげー!サボりバレちった!音楽室にスカート忘れたからかな。エルザ、怒られないうちに教室戻んな」
「あ……はい」
全く、荘司先輩はやはり嵐のような人だ。けれど、僕を乱す嵐じゃない。まるで、安らぎを与えてくれるような不思議な嵐なのだ。
「えっと……好きか嫌いかで言うと好き、ですけど」
「そういうんじゃなくてさ、抱き締めたいとか、ちゅーしたいとか、そっちの好き」
この人は真剣に、何て恥ずかしい事を聞いてくるのだろう。自由人の特権なのだろうか、誰かにズバズバとこんな事を普通言えないだろう。
「……そういうのとは違う、と思います、けど、僕、恋とかそういうの分からないし、そもそも他人を愛だ恋だ抜きにしてこんなに大切に想うのも初めてだから、多分、荘司先輩のご期待に添える答えは出来ません」
「そ、かぁ。ごめんな。特に深い意味は無くて!エルザが真面目に答えるからからかいようも無かったじゃーん」
「あはは」と取って付けたように笑う荘司先輩は、いつものふにゃふにゃな荘司先輩だ。
こういう時にどう返して良いのか分からないものだから、困って持て余した右手で眼鏡のフレームを鼻に押し付けて、そのくすぶる何かを消化しようと試みる。
《三年四組満島荘司君、至急、職員室に来て下さい。繰り返します……》
「げげー!サボりバレちった!音楽室にスカート忘れたからかな。エルザ、怒られないうちに教室戻んな」
「あ……はい」
全く、荘司先輩はやはり嵐のような人だ。けれど、僕を乱す嵐じゃない。まるで、安らぎを与えてくれるような不思議な嵐なのだ。