【完】ヴァンパイア、かなし
教室に戻ると、いつもは机がずらりと並んだ教室が、明治時代をモチーフにした和の備品ですっかり装飾されていた。


「エルザー、何処までゴミ捨て行ってたんだよー!終わっちゃったぞ!」


「ごめん。荘司先輩にちょっと捕まってて」


明日の売上の作戦を練っていたのだろう、全員が輪になっている。そこに、おどけながらも自然と僕を混ぜてくれる彼等に、僕の居場所はあるんだと実感させられる。


「あー、それで満島副団長呼び出しね。エルザ呼ばれなくて良かったな」


「あの人とは普段の行いが違うから」


僕の答えにクラスメイト達から笑いが起こる。そして、遠慮がちに女子達が僕を見た。


「エルザ君、また体調悪くなったのかと思って心配したんだよ。私達、無理させたのかなって」


さっきも荘司先輩に心配されたが、僕はそんなに体が弱そうに見えるのだろうか。


……否、見えるのだ。体を蝕む何かが、僕だけでなく周りまで不安にしているのだ。


「大丈夫だよ。ありがとう」


だから虚勢を張る。この日だまりに少しでも長くいたいから、僕は、出来る限り虚勢を張り続ける。
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