【完】ヴァンパイア、かなし
来場者や在校生の拍手で迎えられて、緊張でくらりと眩暈した。


《遅くなってすみません。ご紹介にあがりました、一年の紫倉・ブルーム・エルザです》


何とか踏み止まり、声を出す。マイク越しに響く僕の声は、酷く震えていつもより早口な気がする。


《実は、僕をプロデュースしたあの満島さんが、長いお手洗いに行っていまして……》


「おーい!それ内緒にしてろよ!しーっ」


僕の突然の無茶ぶりに、荘司先輩は即座に乗ってくれて、場が笑いに包まれたと同時にほぐれた僕の緊張。


気の利いたスピーチなんて用意してないけれど。纏まる気がしないけど、でも、僕の思いを紡ごう。


《赤嶺さんと満島さんと出会う以前の僕は、周りと違う髪や肌、目の色に負い目を感じ、隠して生活していました。目立たず、空気のように学校という小さな社会に溶け込むことが幸せだと、そう思っていました》


それがほんの数週間前の僕。あれから、多くの時間を過ごした訳じゃないけれど、僕は確実に変わることが出来たのだ。
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