【完】ヴァンパイア、かなし
目の前の皆が、そして、後ろに立つ和真先輩が、荘司先輩が、僕の声に耳を傾けてくれている。
ステージに立っているのだから当たり前だと言われればそれまでだけど、僕にとって、その当たり前がとても幸せな事。
僕の、歌うと強く喉にぶつかるように掛かるビブラートが、伸びやかに体育館に響いた。
体育館で歌うと、マイクを通すと、こんな風に声が伝わる事も、知らなかった。
この日だまりには知らない事だらけだ。だから、知り尽くしたい。知り尽くすまで生きて行きたい。
その願いが叶わぬ物だということが心の何処かで分かっていても、願わずにはいられない。
歌い終わってマイクから一歩下がり深く頭を下げると、温かな拍手が体中に浴びせられた。
それが、どれだけ眩しい光なのか、きっと僕自身が変わらない限り知り得なかった事なのだ。
「えっ……エルザァ!」
「わっ!ちょっと、何でまた泣いてるんですか、貴女は!」
多くの人が見ているのに、そんなものお構い無しで涙と鼻水を垂らした和真先輩が、僕の体へとダイブしてくる。
笑いに包まれた体育館や、泣くと猿のように不細工になる和真先輩の顔、僕の頭を撫でる荘司先輩の固い掌の感触。
この日だまりは、僕を焦がして殺して行くけど、同時に僕の幸せの在処だ。
ステージに立っているのだから当たり前だと言われればそれまでだけど、僕にとって、その当たり前がとても幸せな事。
僕の、歌うと強く喉にぶつかるように掛かるビブラートが、伸びやかに体育館に響いた。
体育館で歌うと、マイクを通すと、こんな風に声が伝わる事も、知らなかった。
この日だまりには知らない事だらけだ。だから、知り尽くしたい。知り尽くすまで生きて行きたい。
その願いが叶わぬ物だということが心の何処かで分かっていても、願わずにはいられない。
歌い終わってマイクから一歩下がり深く頭を下げると、温かな拍手が体中に浴びせられた。
それが、どれだけ眩しい光なのか、きっと僕自身が変わらない限り知り得なかった事なのだ。
「えっ……エルザァ!」
「わっ!ちょっと、何でまた泣いてるんですか、貴女は!」
多くの人が見ているのに、そんなものお構い無しで涙と鼻水を垂らした和真先輩が、僕の体へとダイブしてくる。
笑いに包まれた体育館や、泣くと猿のように不細工になる和真先輩の顔、僕の頭を撫でる荘司先輩の固い掌の感触。
この日だまりは、僕を焦がして殺して行くけど、同時に僕の幸せの在処だ。