【完】ヴァンパイア、かなし
二日間頑張り抜いた文化祭も無事終わり、いつも通りの校舎へ片付けて戻した後は、後夜祭が執り行われていた。
ライトアップされた夜のグラウンドは生徒達が幸せに寄り添うように集まっている。
「紫倉君は行かなくて良いの?あっちへ」
「ええ。たまにはこうして立ち止まっておかないと、体力が持ちませんから」
僕は、ありさ先生のいるいつもの音楽室からその光景を眺め、しばしの休息についていた。
「それより、見てたわよ体育館の。紫倉君は変わったのね。キラキラしてたわ」
女性らしい円やかな声で話したありさ先生の黒い瞳は外のライトの光を吸い込み、不思議な色味を帯びている。
「自分でも驚いていますよ。あんな大胆な事が出来るなんて」
「そう?特別な人の為なら、人は大胆な事なんて簡単に出来るものよ。この間だって赤嶺さんの事助けたじゃない」
ストレートな物言いで言われたそれに、僕は答えを詰まらせてきゅっと唇をすぼませる。こういう言葉への返答は、なかなか答えが見つからない。
「とりあえず……お疲れ様」
「はい。お疲れ様でした」
ありさ先生から差し出された血液パックに、自身の血液パックをこつんとぶつけ、互いを労う。
僕は、この二日間人生で一番の力を発揮したのかもしれない。