【完】ヴァンパイア、かなし
応援団の演舞が終わり、室内にいても分かるほど大きな拍手がグラウンドに響き渡った。


「貴重な後夜祭の時間を、ありがとう!第54期応援団団長、赤嶺和真です」


マイクも無しに空間をいっぱいにした和真先輩のハリのある声。


「ひとつ、最近私に出来た大切な人の話をしようと思う!皆、後夜祭の出し物だと思って聞いて欲しい!」


皆が、和真先輩のその声に耳を傾けているのが此処から良く分かる。


「彼は、物静かでいつも自ら一人を選んで生きる人だった。私にはそれがどうしてか理解出来なくて、きっかけがあって話すようになった時、私の当たり前の日常を彼に教えようと思った」


何て勝手なのだろう。理解出来ないから自分の世界に引っ張り上げるだなんて。


そう思うのだけれど、彼女のその勝手さに僕は救われた。その事実は曲がらない。


「最初のうちは拒絶された。だから、私のしている事は間違いかもしれないと考えた。……でも、どうしても彼は幸せそうには見えなくて、どうしたら彼が幸せな顔をしてくれるのか、必死で考えた」


いつも和真先輩の頭の中は、人の事ばかり。僕の為に、僕が自らひとりぼっちでいた中庭に、荘司先輩には言わないで何度となく来てくれた。
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