【完】ヴァンパイア、かなし
彼等は完璧ではない。完璧に優しい嘘をつける程大人じゃない。


しかしそれは、僕も同じ事。


泣きながら優しい嘘をつき続けてくれる彼等に、僕も顔に笑みを浮かべながらそっと涙を零した。


「それにはまず、期末テストちゃんと乗り切らなきゃね。……特に君。赤点なんか取ったら和真先輩と荘司先輩に怒られるから」


「はは……!赤嶺団長の彼氏で満島先輩の弟分のエルザパイセンにそれ言われちゃあ、頑張らなきゃなぁ」


僕は、死に行くその時まで彼等の優しい嘘も、抱き締めて行こう。


僕が朽ち果てた後は紅葉から葉が落ちるように、あっという間に彼等からも僕に関する記憶が枯れ落ちるのだ。


だから、この温かな気持ちも、悲しみも、後悔も、彼等が背負って生きて行く事は無い。


それが悲しいと同時に救いだと思った。だって、悲しい想いをするのは、僕と僕の家族、呪いの十字架を背負う者達だけで十分だろう?
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