【完】ヴァンパイア、かなし
彼等が帰る間際、一つだけどうしても、と願った。
「和真先輩や荘司先輩に、僕の事に関して話さないで欲しいんだ。家の場所とか、どんな様子だったかとか」
「でも、二人共すげー心配してるぞ?」
「うん……分かってる。だから、かな」
『君だったら大切な恋人や兄貴分に見栄を張りたく無いかいと』言葉を付け足すと、真剣な顔をして頷いてくれた。
「約束するよ」
応援団の彼が差し出したゴツゴツの拳に、ミミズ腫れが進行している醜く白い手を、弱々しくぶつけた。
「でもよ、仮に二人がお前を見たとしても、俺は二人が離れることは無いと思うよ」
優しさでそう言ってくれた事を、嬉しくも悲しいと思う。
二人が引いたり、怖がったり、離れる事はな無いと分かっている。だから会いたくない。
あの二人に会ったら生きたくなってしまうから。幸せにしがみつきたくなるから。
僕みたいな化け物にはそんな資格なんて無い。少しの間だでも幸せに生きれただけで満足しなくてはいけないのに、幸せにしがみついてはダメだ。