【完】ヴァンパイア、かなし
そんな事、分かってるのに。


彼等がいなくなった僕の部屋はやけに広くて、貼り付けた笑顔が消え去る。


「ホントは会いたい……会いたいのに、生きたい、のに……!」


本当はずっと日だまりにいたかった。父のように歳を取り、幸せで何度も笑った跡のような皺を顔に作って、愛しい家族を作り、死にたかったのに。


ぱたぱたと拳に、毛布に落ちる涙がそう出来ない事を物語っているようだ。


それでも決意は揺るがない。だって、愛しい人の命と引き換えに得た偽りの幸せなんて、偽りであって幸せなんかじゃないのは分かっている事だから。


「エルザおにーちゃん、泣いてるの?」


「……アメリ、こっちへおいで」


まだ小さな妹が、変わり果てた僕に、何の恐怖心も無く近付いてくる。


僕と同じ白金の髪の色、乳白色の肌、血潮が透けた赤い瞳。


でも、彼女は僕と違い何も知らぬまま、呪いを解いたのだ。それを否定はしない。彼女は本能に乗っ取り、化け物を満足させただけなのだ。


「痛い痛い?」


「うん。胸の奥が、少しね」


答えると、一生懸命に僕の胸を撫でるぷくぷくとした柔らかな手。ああ、この手は生に満ちている。
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