【完】ヴァンパイア、かなし
「荘司、先輩……!」


それは、僕が心配していた張本人。いつも太陽みたいに笑っている彼はそこにはいない。


ドアを閉めてそっと僕に近付く荘司先輩は、会った事の無い違う人みたいで怖かった。


「貴方……何、してたんですか?和真先輩も心配してますよ?」


恐怖を消すように彼に言った言葉は喉から空へ出る過程で震え、情けなく消えて行く。


「心配かけてるのはどっちだよ。和真の見舞いやんわり断ってさ、あいつが影で泣いてるの分かってる?」


荘司先輩の返答にぐっと唇を噛み締める。それでも、僕が彼女に会う事は許されない。


「……ごめんなエルザ。痛いほどお前の気持ち、分かってる。ずっと気付いてたのに、一人で悩ませて、ホントにごめん」


荘司先輩、どうしてそんなに悲しい顔をして笑うんですか?どうして全部分かっているような顔をするんですか?


とは、尋ねる事は出来なかった。それは、何となくだが、彼が全て知っているんじゃないかと悟る事が出来たから。


「エルザ、お前、やっぱりヴァンパイアだったんだな」


やっぱりという事は、以前から気付いていたのだ。僕が、彼や和真先輩の友人を奪った化け物と同類だという事実を。
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