【完】ヴァンパイア、かなし
「……いつから、そう思っていたのですか?」


いくら誤魔化しても、きっと誤魔化せないんだと思い、僕は荘司先輩に尋ねる。


「んー、そう思ったのは最初から。野生の勘ってやつ?確信したのは、やぐら練習してた時和真助けてから、かなぁ」


野生の勘なんていう不確かな言葉さえも似合ってしまうのは、きっと荘司先輩の人間性なのだろう。


「僕はさぞ憎かったでしょう。荘司先輩の大切な友人を奪った者と僕は、同じ種族だから」


それでも、気付いて尚優しくしてくれたのだと言うのなら、この人はただのお人好しだ。


そう思うと、涙と笑みがこぼれそうになる。最近の僕は涙もろい。これまでの短い人生で泣かなかった分が全部出ているのかもしれない。


「ったく……そんな顔すんなよ。俺はエルザを憎んじゃいねぇよ」


僕は彼に向けて、どんな情けない顔をしたのだろうか。


ぐしゃぐしゃと僕の頭を撫でる荘司先輩の掌の温度に嘘偽りは無い。いつもの温かな、草原みたいな優しい大きな手だ。
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