【完】ヴァンパイア、かなし

荘司先輩は、いつものおちゃらけた姿からは想像し難い大人びた笑みで笑うと、ベットの端っこへ腰掛けた。


「それに、この辺ヴァンパイア特区なんだろ？財団法人の支部があるし。多分うちの高校にだってエルザ以外に何人かヴァンパイアいるんじゃねーの？」


「な、何故、それを……？」


そんな情報、普通の人間が知り得る事ではない。まして、荘司先輩はまだ未成年の人間で、そんな事知っている方がおかしいのに。


考えが纏まらなくて、どうして良いのか分からない泳ぐ視線を荘司先輩へ向ける。


すると、荘司先輩は涼しげな瞳を更に細めて柔らかく笑う。


荘司先輩のその顔は、まるでお祭りで売っている狐のお面のような顔だ。


「あのさぁ、俺の初恋の話、聞いてくれる？」


「また、何の脈絡も無くいきなりですね……」


「まぁまぁ、いつもの事でしょ？つまらなかったら仕方ないから寝ても良いよ」


そうは言うものの、それは聞き逃してはいけない大切な話な気がして、僕は黙って彼の声へ耳を傾ける。