【完】ヴァンパイア、かなし
しかし、この話には僕の知識と矛盾する点があることに気付く。


「彼女が亡くなったなら、何故貴方は彼女の記憶があるのですか?」


そう。憶えている事自体がおかしい。人間側、ヴァンパイア側、どちらが亡くなったとしても、財団法人に記憶を消される筈だ。なのに、何故この人は彼女の記憶を持っている?


「俺は記憶の操作を故意にしないで貰ったんだ。……あいつの両親に協力してもらってね。エルザは、財団法人がどうやって記憶の操作をしているか知ってる?」


その質問の重みに押し潰されそうになりながら首を横に振るうと、荘司先輩はこめかみにトントン、と人差し指をぶつけながら話を続けた。


「電磁波を流すんだよ。テレビ、携帯、パソコン。……人間は、あらゆる所で電磁波を浴びる。それを利用して財団法人は記憶を改ざんしているんだ」


ヴァンパイア一族の僕ですら知らなかった情報を知っている荘司先輩。この人は、一体何処まで世界の裏に足を突っ込んでいるのだろう。
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