【完】ヴァンパイア、かなし
「消す記憶元となる対象者との繋がりが強い者は、そういった電磁波を直接脳に流す特別プログラムを組まれるんだ。あいつの父親は財団法人でそれをする仕事をしている。だから、口裏を合わせて忘れたふりをした」
ふりをした、と言っても、そう簡単に出来る事だとは思えないし、嘘でも大切な人を忘れたふりをするだなんて、辛かっただろう。
「向こうの両親は俺にあいつを忘れて楽になんてさせたくなかったようだし、俺だって忘れたくなかった。利害一致したんだ。一時的に辛かろうが、そんなの、失った痛みよりずっと楽だ」
彼は二度も失う痛みを経験している。忘れたい程の痛みを。なのに、それを忘れようとは絶対にしない。だから彼は強い。
「それからずっと、ヴァンパイアについて財団法人を挟んで学んだ。高校を卒業したら専門学校に進学って、表立ってはそうなってるけど、本当は財団法人に正式に入って、プログラミングを学びながら働く事になっている」
「荘司先輩は、それで幸せですか……?」
痛みを背負って生きる事が、誰にも弱音を吐かずにこれまで進んだ彼の道が、僕にはどうしても幸せだとは思えない。
この人は多分、助けを求める手を差し伸べない道を選んだのだ。暗闇を自力で這い上がる決心を失った時にしたから強いのだ。
ふりをした、と言っても、そう簡単に出来る事だとは思えないし、嘘でも大切な人を忘れたふりをするだなんて、辛かっただろう。
「向こうの両親は俺にあいつを忘れて楽になんてさせたくなかったようだし、俺だって忘れたくなかった。利害一致したんだ。一時的に辛かろうが、そんなの、失った痛みよりずっと楽だ」
彼は二度も失う痛みを経験している。忘れたい程の痛みを。なのに、それを忘れようとは絶対にしない。だから彼は強い。
「それからずっと、ヴァンパイアについて財団法人を挟んで学んだ。高校を卒業したら専門学校に進学って、表立ってはそうなってるけど、本当は財団法人に正式に入って、プログラミングを学びながら働く事になっている」
「荘司先輩は、それで幸せですか……?」
痛みを背負って生きる事が、誰にも弱音を吐かずにこれまで進んだ彼の道が、僕にはどうしても幸せだとは思えない。
この人は多分、助けを求める手を差し伸べない道を選んだのだ。暗闇を自力で這い上がる決心を失った時にしたから強いのだ。