【完】ヴァンパイア、かなし
「簡単に、諦めるな。俺が諦めてない命を自分で諦めるな……!」


「でも、僕は」


いくら何と言おうが、僕には死ぬ運命を受け入れるしか無い。まさか和真先輩を吸血しろとはこの人は言わないだろうし、思ってもいない筈なのに。


「俺な、財団法人にもう少しだけ関わっているって言っただろ?あいつの父親の下で、既にプログラミングを学んでる。電磁波の記憶操作技術から、ヴァンパイアの呪いをなんとか出来ないか、研究が進んでるんだ」


「それってつまり」


「ああ、希望はある。だから、もうちょっとだけ待ってくれ。しぶとく生きてくれ」


荘司先輩は至って真剣だ。ヴァンパイアという種族が生まれて何百年と繰り返された呪いを、現代の技術で無くそうと必死にもがいている。


この先、僕のように苦しむヴァンパイアがいなくなれば良いと思った。それだけで、大きな希望に満ちているとも。


でも……その技術が確立するまで、僕は生きる事は出来ないと思う。もう、僕は気力だけで生きている状態だ。夜眠るのすら怖いくらいに弱っている。


「……生きますよ。知ってますか?僕みたいに性格の歪んだ奴は、なかなかにしぶといんです。貴方みたいなバカ正直な人ほど早死にしそうです」


「ははっ、そうだな。俺に辛辣な事を言えるうちは、お前は死なないよ」


優しい人は、嘘をつく。荘司先輩だってきっと、もう僕の命が短いのを分かっているのに。


僕のこの虚勢も、優しい嘘になっただろうか。僕は優しい人になれただろうか。
< 159 / 200 >

この作品をシェア

pagetop