【完】ヴァンパイア、かなし
「先生は、学校辞めたらどうされるのですか？」


「詳しくは決めていないけれど……私ね、長年探していた物が見つかったの。ようやくね。だから、それを手に入れるのよ」


そう話した先生は、うっとりとした瞳をしていて、恋をしているようだった。


女性らしい顔つきからかぐわしい香りを漂わせたありさ先生は、少しだけ怖い。


「紫倉君は、どうするの？このままで、良いの？」


彼女の言葉には『吸血しなくて良いのか』という意図がこもっているのだろうか。それとも『もう和真先輩と会わなくて良いのか』という意図がこもっているのだろうか。


「……このままで良いんです。でも、許されるなら、もう一度だけ彼女に会いたいなぁ」


彼女が笑う顔を見たい。彼女の声変わり前の少年みたいな声が聞きだい。彼女の柔らかな肌に触れたい。


「男の子ね」


そう呟いたありさ先生は、寂しげな、そして優しげな笑みを浮かべた。


短い一言にどんな意味がこもっていたのかは、良く分からない。それは、大人の女性が発する少しミステリアスな色味を帯びていて、僕には難しい。
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