【完】ヴァンパイア、かなし
「ど……どう、して?」
姫君にしては勇ましく、神様にしては人間臭い表情をしていると思った。
窓の向こう、月光の青白い光を目一杯吸い込んだ長い黒髪は、風に逆らう事なくサラサラと流れ、白い肌に乗った顔のパーツは今にも泣き出しそう。
窓の下の隅には梯子の先端のようなものが写り混んでいて、二階の僕の部屋にそれで到達したのだということが読める。
もう季節は秋から冬へと移るというのに、薄手のカーディガンと何か一枚しか着てなさそうで、その細い体のラインが分かるラフな格好。
急いで窓を開くと、素早く窓に足をかけたその人は、薄手のマキシ丈ワンピースにクロックスと季節感がズレた格好だということが直ぐに分かった。
「貴女……馬鹿にも程がある!何で、来たのですか?」
我慢出来なくてボロボロと涙を流すと、その人は悲しそうに微笑み、窓を越えて僕へ飛び付いた。
「馬鹿はどっちだこの大馬鹿者!……君がいくら拒んでも、私が会いたいから会いに来た。会いに来たんだよ、エルザ……!」
組み敷かれて、その人の涙が頬に降り注ぐ。僕の涙と混ざって、もうどちらが流した涙なんだか分からないくらいにぐちゃぐちゃに溶け合う。
「和真先輩……ああ、夢なら抱き締めても良いのかな……?」
「夢でたまるか!やっと、君に会えた」
涙声のそれは、ずっと求めていた声で。抱き寄せた温もりは、ずっと触れたかったもので。
いくら運命がどうとかほざいていても、貴女が僕の手の中にいるのに、拒めるわけがない。
ああ、運命とか、化け物とか、全部関係ない。僕は彼女を愛してるただの男なのだ。
姫君にしては勇ましく、神様にしては人間臭い表情をしていると思った。
窓の向こう、月光の青白い光を目一杯吸い込んだ長い黒髪は、風に逆らう事なくサラサラと流れ、白い肌に乗った顔のパーツは今にも泣き出しそう。
窓の下の隅には梯子の先端のようなものが写り混んでいて、二階の僕の部屋にそれで到達したのだということが読める。
もう季節は秋から冬へと移るというのに、薄手のカーディガンと何か一枚しか着てなさそうで、その細い体のラインが分かるラフな格好。
急いで窓を開くと、素早く窓に足をかけたその人は、薄手のマキシ丈ワンピースにクロックスと季節感がズレた格好だということが直ぐに分かった。
「貴女……馬鹿にも程がある!何で、来たのですか?」
我慢出来なくてボロボロと涙を流すと、その人は悲しそうに微笑み、窓を越えて僕へ飛び付いた。
「馬鹿はどっちだこの大馬鹿者!……君がいくら拒んでも、私が会いたいから会いに来た。会いに来たんだよ、エルザ……!」
組み敷かれて、その人の涙が頬に降り注ぐ。僕の涙と混ざって、もうどちらが流した涙なんだか分からないくらいにぐちゃぐちゃに溶け合う。
「和真先輩……ああ、夢なら抱き締めても良いのかな……?」
「夢でたまるか!やっと、君に会えた」
涙声のそれは、ずっと求めていた声で。抱き寄せた温もりは、ずっと触れたかったもので。
いくら運命がどうとかほざいていても、貴女が僕の手の中にいるのに、拒めるわけがない。
ああ、運命とか、化け物とか、全部関係ない。僕は彼女を愛してるただの男なのだ。