【完】ヴァンパイア、かなし
「何を言っている。君ほど綺麗な人を、私は知らないというのに」


まさかそんな事を言われるだなんてこれっぽっちも思っていなくて、動きが、思考が止まる。


「僕、髪の色も、目の色も、肌の色も和真先輩と違うのに。違うどころか、もうこんなになって、気持ち悪いのに」


「気持ち悪い、わけ……!」


ひゅ、と喉を鳴らして悲しそうに顔を歪めた和真先輩は、僕の顔中に這ったミミズ腫れを、確かめるように唇でなぞる。


「これは君が苦しみながらも生きている証拠だろう?これが気持ち悪いわけ、無いだろう?君は出会った時からずっと綺麗だ。全部、綺麗だ」


「泣かないで、お願いだから。僕、貴女の泣き顔は嫌いだ。胸が痛くなるんです。息が、苦しくなるんです」


彼女を泣かせたのは僕だ。悲しませたのは僕なんだ。


その流れる涙を、今度は僕が掬うように舌で舐め取る。僕が流させたこの涙は、僕が全て拭ってしまおう。
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