【完】ヴァンパイア、かなし

「荘司先輩、せ、せんっ……ぱい！」


そこには血を流し、左腕が異様な方向へと曲がり、壁へともたれ掛かるように意識を失った荘司先輩がいた。


白い壁一面には、荘司先輩の血で描かれたであろう文字が、悪夢のように広がっている。


「Do un requiem della disperazione.……なんて、ふざけた事を！」


これは、このような非道な事をした化け物からの、僕へのメッセージ。


わざわざ僕の馴染んだ祖国の言葉で、かけがえのない友人の荘司先輩をダシに、僕に挑発するなんて。


『絶望の鎮魂歌を捧げよう』


白い壁一面に描かれた鮮血の文字は、僕をヴァンパイアだと知り、荘司先輩が僕の大切な友人だと知り、そして、おそらく和真先輩が最愛の人だと知る人物。


そのヒントを辿れば、この非道な事をした者が一人しかいないのは頭では分かった。


でも、信じたくない。受け入れられない。あの笑顔も、優しさも、全部が嘘だっただなんて。