【完】ヴァンパイア、かなし
迷っている暇は無い。こうしているうちに荘司先輩が、和真先輩が、失われてしまうかもしれない。
動け、動けと僕の足を何度拳で殴りつけても、穏やかな思い出達が脳には駆け巡り、体が動かない。
「え……る、ざ」
「っ……!?荘司先輩!良かった、いや、良くないけど、生きてて、良かった」
「勝手、に、殺すな」
そんな僕を呼ぶ、大切な友人の声。ひゅうひゅうと喉を鳴らして苦しそうにする彼は、それでも、動く血まみれの右手で僕の胸元を掴んだ。
「頼む……かず、さ、お前、が」
「分かった。分かったよ荘司先輩。僕が、彼女を守ってみせる。この命に代えても」
そうだ。思い出にしがみついて立ち止まって等いられない。
こんな時でも荘司先輩は、その瞳の光を細めて微笑み、僕に強さを与えてくれる。
「どこだ……!許さない!鎮魂歌でも何でも演奏してみせろ!」
感覚という感覚を研ぎ澄ませ、こんな事が出来る唯一のあの人の気配を探す。
そうすると、耳に、鼻に、良く聞き慣れた甘い女性らしい声と、それに見合う甘ったるい香りが漂ってきた。
動け、動けと僕の足を何度拳で殴りつけても、穏やかな思い出達が脳には駆け巡り、体が動かない。
「え……る、ざ」
「っ……!?荘司先輩!良かった、いや、良くないけど、生きてて、良かった」
「勝手、に、殺すな」
そんな僕を呼ぶ、大切な友人の声。ひゅうひゅうと喉を鳴らして苦しそうにする彼は、それでも、動く血まみれの右手で僕の胸元を掴んだ。
「頼む……かず、さ、お前、が」
「分かった。分かったよ荘司先輩。僕が、彼女を守ってみせる。この命に代えても」
そうだ。思い出にしがみついて立ち止まって等いられない。
こんな時でも荘司先輩は、その瞳の光を細めて微笑み、僕に強さを与えてくれる。
「どこだ……!許さない!鎮魂歌でも何でも演奏してみせろ!」
感覚という感覚を研ぎ澄ませ、こんな事が出来る唯一のあの人の気配を探す。
そうすると、耳に、鼻に、良く聞き慣れた甘い女性らしい声と、それに見合う甘ったるい香りが漂ってきた。