【完】ヴァンパイア、かなし
微かなそれを頼りに、僕は靴箱からグラウンドへと全速力で向かう。
広いグラウンド。そのグラウンドの一番奥には、文化祭の夜に和真先輩を、荘司先輩を、応援団の皆を凛々しく美しく照らし付けた大きなライトがどっしりと立っている。
その高いライトの上に、人影が二つ。
「その人を離せよ」
その人影を睨みつけると、女性特有の甘みのある甲高い笑い声が響き渡った。
「あははは!ほんっとうに!どんどん男の子になるのねぇ!でも、そんな死にぞこないの体で何が出来るの?紫倉・ブルーム・エルザ君!」
信じたくない光景だった。でも、夢じゃない。この残酷な光景は、僕の現実で起きている事なのだ。
「和真先輩を離さないなら、僕は貴女を殺すこ事も厭わない……ありさ、先生!」
風に、和真先輩のさらさらと流れる髪の毛と同じ方向に、ふわふわと緩く巻かれた黒髪が揺れた。
「嫌よぉ。十二年も探したの。そして見つけたのよ!あの日よりずっと美味しそうになったこの子を!紫倉君になんてあげなぁい」
どうして今まで気付かなかった。言動や目線に、ありさ先生の狂気を察知していたと言うのに。
広いグラウンド。そのグラウンドの一番奥には、文化祭の夜に和真先輩を、荘司先輩を、応援団の皆を凛々しく美しく照らし付けた大きなライトがどっしりと立っている。
その高いライトの上に、人影が二つ。
「その人を離せよ」
その人影を睨みつけると、女性特有の甘みのある甲高い笑い声が響き渡った。
「あははは!ほんっとうに!どんどん男の子になるのねぇ!でも、そんな死にぞこないの体で何が出来るの?紫倉・ブルーム・エルザ君!」
信じたくない光景だった。でも、夢じゃない。この残酷な光景は、僕の現実で起きている事なのだ。
「和真先輩を離さないなら、僕は貴女を殺すこ事も厭わない……ありさ、先生!」
風に、和真先輩のさらさらと流れる髪の毛と同じ方向に、ふわふわと緩く巻かれた黒髪が揺れた。
「嫌よぉ。十二年も探したの。そして見つけたのよ!あの日よりずっと美味しそうになったこの子を!紫倉君になんてあげなぁい」
どうして今まで気付かなかった。言動や目線に、ありさ先生の狂気を察知していたと言うのに。