【完】ヴァンパイア、かなし
「十二年前は邪魔されて食べれなかったもの。あの子も赤嶺さんに恋してて美味しかったけど、食べたかったのはあの子じゃない」


「なっ……!?お前が、お前があの時の!」


ありさ先生の腕に拘束された和真先輩が、怒りに顔を染め、ボロボロと涙を零す。


「そうよ?貴女と満島君、どうやって記憶操作から逃れたか知らないけど、全部は覚えてないのね。あの日、貴女達二人は私の顔を見たというのに。うふふ、可哀想ねぇ」


ニタニタと甘ったるく笑うありさ先生に、和真先輩は憎しみを込めて睨む。しかし、ヴァンパイアと人間では力の差が有り過ぎる。和真先輩は、ありさ先生の手からは逃げられない。


「ずーっと憎しみでいっぱいだったでしょう?ヴァンパイアが憎い?」


嫌な、予感がした。


「やめろ」


「その憎いヴァンパイアが、まさか私だけだとは思わないでしょう」


「やめろ!」


変わらずニタニタと笑うありさ先生は、そのふっくらとした唇を舌なめずりで濡らし、八重歯を光らせる。
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