【完】ヴァンパイア、かなし
ありさ先生だったそれが、地面に落ちる音がやけに生々しい。


こんな人だったけど、でも、僕の支えだったんだ。大切な時間を、秘密を共有してたんだ。僕は、そんな存在を殺した。食べた。


「……エルザ」


昨日僕を求めた和真先輩の、酷く怯えた顔と声。当たり前だ。僕が、化け物だと分かったのだから。


それに傷付く資格なんて無いのだけれど、胸がずきんと痛む。呪いに蝕まれるより、ずっと。


僕は日だまりの温かさに、浸り過ぎていたのかもしれない。


これが本来僕が受けるべき扱いだという事を、その温もりによって忘れていただけだ。


いつの間にかグラウンドには騒ぎを聞きつけた生徒達が集まり、僕を見て恐怖に震えている。


そう。いくら人間のふりをしていても、僕は化け物なのだ。


「掴まって。お願い。貴女を殺すことは無いから」


和真先輩の腰に手を添え耳元で囁くと、遠慮がちに彼女の腕が首に回る。


それを確認し、ライトから固いグラウンドの地面へと降り立つ。


その光景を眺める生徒達は、まるで物語のヴァンパイアを恐れる民衆のようだとそう思った。
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