【完】ヴァンパイア、かなし
「紫倉さん達は、これからどうされるのですか?」


「エルザの祖国、イタリアへ帰ろうと思っているの。あの子の大好きだった美しい街を一望出来る所に、お墓を立てようと考えているわ」


答えたのは、エルザの母親で、財団法人の組員でもある人。


芯の強そうな美しい人で、見た目は父親譲りだったエルザは、中身はこの人に似たのかな、なんて思う。


「日本で最後に、あの子に満島君みたいな友達がいたことを知れて、本当に良かった」


俺はこの人にこんなことを言ってもらえる資格のある人間なのかな。


「紫倉さん。本当はエルザ君の物は処分しなくてはいけない決まりだったのですが、どうしても一つだけ捨てられなくて……受け取って貰えますか?」


この家族と話す機会があれば、絶対渡したかった物が俺にはあった。それの入った封筒を差し出す。


「これは……」


「何て、素敵なの。エルザは、こんな顔をするようになっていたのね」


涙を滲ませ紫倉夫妻が見ているのは、文化祭の時にインスタントカメラで撮った、俺と、和真と、そしてエルザの並んだ写真。


戸惑いながらも緩くピースし微笑むエルザのその顔に、夫妻はどんな想いを馳せているのだろうか。
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