【完】ヴァンパイア、かなし
「おとーさんとおかーさん、このお兄ちゃんに泣かされたの?この人、悪い人?」


そんな光景を不思議そうに眺めていた妹のアメリは、俺から両親を守るように前に出る。


「悪い奴はアメリがやっつける!えい!えい!」


「イテテ!骨折してる所を狙うなんて、やっぱりエルザの妹だ!頭良いな!」


エルザと同じ顔のアメリは、エルザと同じ、大切な人を守る事が出来る強い者なのだろう。


そんなアメリの柔らかな髪の毛を撫でて、にっと笑って見せる。


「アメリもエルザお兄ちゃんもヒーローだなぁ。悪者は勝てないから立ち去るか!」


しかし、それでもこの子は物心がつく前に、エルザのように苦しまずに呪いを解いたのだ。


どちらが良いか、どちらが正しい結果かは俺には分からないし、断言出来ない。


失う事で生きるのを選んだアメリ。守る事で死ぬのを選んだエルザ。


どちらも誰の記憶にも残らない、しかし正反対のちっぽけな物語。


けれどもそれを、ちっぽけで無力な俺は死ぬまで忘れることはないだろう。
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