【完】ヴァンパイア、かなし
この平成の時代を生きるヴァンパイアは、人間社会の中へ溶け込み、人間として生きている。


よく伝説に描かれるような、十字架やニンニクが苦手な者はいない。


僕は僕の一族以外のヴァンパイアに会ったことがあるが、彼はキリシタンだと話していたし、好物はガーリックトーストだった。


勿論、太陽に焼かれることもないから日中僕のように活動をしている者が殆どだ。


そして、定説で語られる『吸血』もまた然り。


僕達ヴァンパイアは『吸血』というよりは『摂血』をするくらいで、その発達した八重歯を使うこともない。


ヴァンパイアを支えるとある財団法人が、決まった量の輸血パックをヴァンパイア一族に月に二度支給する。


僕達はそれを週に一、二度程摂取するだけで申し分無く生きて行ける。


ヴァンパイアは、ホモサピエンスのイレギュラーというだけで、人間なんだ。
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