【完】ヴァンパイア、かなし
今日一日は、僕が求めない立ち位置での学校生活になってしまった。
気付けば学年が違うのに赤嶺先輩や満島先輩に何度も絡まれてこそこそしなきゃいけないし、そのせいで、話したこともない同級生に話しかけられるし。
「紫倉君、赤嶺先輩と満島先輩と仲良いの?」
「えっと……あ、いえ、あの……そういうんじゃ、ない、です」
今日何度目だろう。こうなるのが分かっていたから、関わり合いたく無かったのに。
心がもやもやして、ぐずぐずして、負の感情が蓄積されて行く、そんな感覚。
こういう時は、決まって放課後に第二音楽室へと足を運ぶようにしていた。
何故かというと、この第二音楽室には、家族以外の僕の理解者がいるからだ。
「あらいらっしゃい紫倉君!」
黒髪を緩やかに巻いていて、大きな瞳とぷるりとした唇、小動物を思わせる表情をした彼女は、この学校の非常勤の音楽講師の天田ありさ(あまだ・ありさ)先生。
そして、彼女もまた、僕と同じヴァンパイアの血が流れる女性である。