【完】ヴァンパイア、かなし
ポルトガル語で作った歌詞に、僕はヴァイオリンで紡ぐ音とありさ先生が奏でる彼女を象徴するような柔らかな伴奏が重なる。
昔から、父の仕事柄音楽に囲まれて生きてきた僕は、クラシックやオペラを奏でるのは苦手だったが、簡単な曲を作るのが好きだった。
ありさ先生はそんな僕に付き合って、こうしてたまに僕と共に音を奏でてくれることがある。
心を許した人と、流れる緩やかな時間。僕は、この些細な時間を幸せだと感じ、現実世界でひっそりと生きていく糧としている。
歌いながら、指先の位置を確認する為に体勢を変え、そろりと視線を動かす。
しかし、指先を見たその視界の奥に映ったものに、僕は思わず演奏と声を止めてしまう。
「なっ……あか、みね、先輩?」
そこには、この二日間僕をもやもやさせている根源の、赤嶺先輩が立っているのだ。
しかも、あの凛とした普段の姿からは想像し難い、大きな瞳からボロボロと涙を零している、なんとも奇怪な姿でだ。
昔から、父の仕事柄音楽に囲まれて生きてきた僕は、クラシックやオペラを奏でるのは苦手だったが、簡単な曲を作るのが好きだった。
ありさ先生はそんな僕に付き合って、こうしてたまに僕と共に音を奏でてくれることがある。
心を許した人と、流れる緩やかな時間。僕は、この些細な時間を幸せだと感じ、現実世界でひっそりと生きていく糧としている。
歌いながら、指先の位置を確認する為に体勢を変え、そろりと視線を動かす。
しかし、指先を見たその視界の奥に映ったものに、僕は思わず演奏と声を止めてしまう。
「なっ……あか、みね、先輩?」
そこには、この二日間僕をもやもやさせている根源の、赤嶺先輩が立っているのだ。
しかも、あの凛とした普段の姿からは想像し難い、大きな瞳からボロボロと涙を零している、なんとも奇怪な姿でだ。