【完】ヴァンパイア、かなし
広げた楽譜を全て奏で終わった頃、応援団のそう広くない部室は、二人分の拍手に包まれていた。
「やっぱり君の歌声は凄いよ、エルザ。荘司もそう思うだろう?」
赤嶺先輩は既に僕の歌声を知っていたにも関わらず、今にも泣きそうな顔で満島先輩の肩にグーパンチを入れる。あれは結構痛かっただろう。
「馬鹿!和真今俺に話振るなよぉ!……うわ、ダメ無理!口開いたら我慢出来ないわ。エルザ、泣き虫な兄ちゃんでごめんな」
なんて訳の分からないことを言いながら、その瞳からは爽やかに涙を流している。
「ちょっと……いつ貴方は僕の兄になったんですか?」
「細かいことは気にしなさんな!くっそ、鼻水出てきた」
「えっ、うわ!僕のカーディガンわざわざ引っ張って拭く必要無いでしょう!?汚い!」
相変わらず、やることなすこと訳が分からないけど、まるで嫌な気がしない。まるで、燦々と照る太陽のような人。
ヴァンパイアは太陽に焦がされて死ぬことは無い筈なんだけどな。……僕は、僕の近くで照るこの太陽に焦がされて、灰になってしまうかもしれない。
「やっぱり君の歌声は凄いよ、エルザ。荘司もそう思うだろう?」
赤嶺先輩は既に僕の歌声を知っていたにも関わらず、今にも泣きそうな顔で満島先輩の肩にグーパンチを入れる。あれは結構痛かっただろう。
「馬鹿!和真今俺に話振るなよぉ!……うわ、ダメ無理!口開いたら我慢出来ないわ。エルザ、泣き虫な兄ちゃんでごめんな」
なんて訳の分からないことを言いながら、その瞳からは爽やかに涙を流している。
「ちょっと……いつ貴方は僕の兄になったんですか?」
「細かいことは気にしなさんな!くっそ、鼻水出てきた」
「えっ、うわ!僕のカーディガンわざわざ引っ張って拭く必要無いでしょう!?汚い!」
相変わらず、やることなすこと訳が分からないけど、まるで嫌な気がしない。まるで、燦々と照る太陽のような人。
ヴァンパイアは太陽に焦がされて死ぬことは無い筈なんだけどな。……僕は、僕の近くで照るこの太陽に焦がされて、灰になってしまうかもしれない。