【完】ヴァンパイア、かなし
「お帰り、エルザ。……どうかしたかい?」
先輩達と別れ家にたどり着くと、父と妹がオフホワイトのソファーで子供向けのアニメを観てくつろいでいた。
「何だか、このところ貧血気味で……。つい二日前にパックを摂取したのに、血が足りないような気がしてならないのです」
ふらふらする体を僕も大きなソファーに沈め、父に向けてそう呟くと、父の穏やかな赤の瞳と途端にギラリと重たい光を放った。
「アメリ、お兄ちゃんとお話があるから、自分のお部屋でご本を読んでいてくれるかい?」
「えー、アメリもエルザ兄ちゃんとお話したいのにぃ」
「いい子だから、後でね」
その父のギラギラとした赤い瞳の威圧感に、妹も観念して、大人しく部屋へと小さな歩幅で消えていった。
リビングには、僕と同じ顔がそのまま年老いた父と、二人きり。その顔は未だかつて無いくらいに、真剣みを帯びている。