【完】ヴァンパイア、かなし
僕は小さい頃から父を怒らせた記憶も無ければ、こんな風に向き合ったことも無い。


僕と同じ顔のこの中年の男は、一体誰なのだろう。まるで、初めて対面したかのような感覚を、血の繋がった父から感じてしまう。


「エルザ、最近新しい交友関係が出来たり、人間関係が変わった、なんてことは無いかい?」


正直、変なことを聞くなと思った。けれど、父の真剣な剣幕に、その思いは言葉になることは無かった。


黙り込んだ僕に、父は更に話を続ける。


「……エルザに話していなかったヴァンパイア一族の呪いがある。それを今から話しておこうと思うが、良いかな?」


先程の質問と今の言葉に脈絡を見いだせないけれど、本能的にその話は聞いておかなくてはいけないことを察し、僕は小さく頷いた。


そして、父の僕と同じ、大きさも色素も薄い唇が動き出す。
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