【完】ヴァンパイア、かなし
しかし、その答えは僕にとって思いもよらない答えだった。


「それは、初恋の相手だ」


あまりにも真剣な父と、それにそぐわぬ答えに、僕の体に入った力がふわっと抜けて、抜け過ぎて、瞬きを二度してしまったことを数えられる程に、拍子抜けをしてしまったのだ。


「は……初恋、ですか?」


拍子抜けしてしまっている僕に対し、父の重圧はかかる一方。


「そうだ。それがどのようなメカニズムであるかは未だに解明されていないが、我々は初めて愛した相手を吸血しなければならないのだよ。そうしなければ……」


「そう、しなければ?」


せっかく抜けていた力だったが、父の止めた言葉の先に嫌な汗が流れ、また体に力が入ってしまう。


「そうしなければ……吸血したい衝動に苦しみながら、いずれは息絶える事になる」


やはり、答えは残酷だった。僕達ヴァンパイアは、人間の形をした化け物なのだと再確認させられる、そんな答え。
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