【完】ヴァンパイア、かなし
「つまり、お父さんも、吸血して人を殺めた経験が、あるということですか?」


「残念ながら、ね。……実は、アメリも先日もう、吸血が済んでいるんだ」


知りたくなかったことだった。父や、妹までもがその化け物じみた行為を済ませていて、僕も、いずれはそうしなくてはならないということは。


「財団法人がヴァンパイアが吸血を行った件については処理をするから、我々は人間に騒がれることなくこの呪いから解き放たれることになる。……アメリはまだ三つだ。本能的だったのだ。彼女がもっと大きくなった時、この事実を伝えるつもりだ」


きっと、アメリが大きくなりこの話を聞いた時、彼女は僕以上に衝撃を受け、そして、傷つくのだろう。アメリは、僕より優しく、そして人間に近い心の持ち主だから。


「改めてエルザに問う。エルザ、愛しい人が出来たのかい……?」


静かな父の問いかけに浮かんだのは……赤嶺先輩の泣き顔と笑顔と、それから、凛とした横顔。


そんなわけがない。知り合って間もない彼女にそんな気持ちを抱くわけがない。これは、きっとただの勘違いだ。
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