【完】ヴァンパイア、かなし
放課後になり、部活に所属していない僕は、真っ直ぐ家に帰ろうと鞄に参考書を纏め始める。
「なー、紫倉君、お願いがあるんだけど」
そんな僕の前に立ちはだかる、この学校というひとつの社会の権力者。
社会のピラミッドの中でも最高位の中に所属する、運動部を支える『応援団』の団員のクラスメイトだ。
今年は特に、三年生の女性団長の凛々しい姿が広報に取り上げられてからはめっぽう最高位に近しき人間だ。
本質的にはその三年生の女団長が最高位であり、この薄っぺらい男は腰巾着に過ぎないが、ピラミッドの下層にいる僕にとっては強大なのに違いは無い。
「……何?」
「社会科の先生に資料返しとくように言われてよぉー、紫倉君帰宅部っしょ?代わりにやってくんねぇ?」
この、クラスの最高権力者に物を命じられてしまっては、下層にいる僕は逆らうことも許されない。現実とは、そんなもの。