【完】ヴァンパイア、かなし
やはり、ピラミッドの最上位に生きる人間というのは理解出来ない。
「君は昼休みも一人でこんな所にいるんだな。誰かと過ごしたりしないのか?ご飯は誰かと食べた方が美味しいぞ」
どうやって嗅ぎ付けたのだろうか、昼休みに中庭の木陰に文庫本と昼食のサンドイッチを持って出ていた僕に声をかけたのは、赤嶺先輩だった。
「……長い休みくらい、一人の時間が欲しいですから。教室は、僕にとっては音が飛びすぎて不快です」
「そうか?色んな会話に耳を澄ますのも、結構楽しいものだがな」
遠回しに一人になりたい事を伝えたつもりだったのだが、赤嶺先輩には通じなかったらしい。
僕の思い等お構いなしに、赤嶺先輩は窓からひょいと体を乗り越え、僕の隣に腰を下ろした。
「女性なのに、はしたないですよ。それじゃあ二階から飛び降りる満島先輩と何ら変わらない」
「いや、二階から飛び降りて平気な程頑丈じゃないよ。エルザはなかなか不思議な考え方をする」
そういう意味じゃ無いのに、とは多分言っても彼女には伝わらないだろう。
僕は言葉を返す事を止め、最後の一切れのサンドイッチを口へと運んだ。